

New Album「タイム・ラプス」
2018.9.12 on sale
【初回限定盤】
【通常盤】
【初回限定盤】2CD (スリーブケース仕様)
UPCH-29305-6 / ¥3,500 (+tax)
*自主制作インディーデビュー前の音源CD付
『夜が明けたら』
1. 退屈しのぎ 2. 畦道で 3. 国道スロープ
4. ミュージシャン 5. 夜が明けたら
【通常盤】1CD
UPCH-20494 / ¥2,800 (+tax)
【夢みる頃を過ぎても MUSIC VIDEO】
【金木犀の夜 MUSIC VIDEO】
これ、絶対1曲目だと思ってました、作ってる時から。イントロは王道ギター・ロックっぽいですけど、ただ、攻めてる音使いってイントロと間奏ぐらいで、Aメロになると急にギター・アレンジが愉快な感じになってたりして。けっこう意外と変な曲、っていうのもあって、1曲目がいいかなって。あとサビがすごいポップで。好きな曲ですね。
歌詞はシンプルですね、短いし。この曲は、私としてはめずらしく、詞先じゃなくて曲が先にあって。音に合わせて書いたので、言葉数がかなりしぼられてるというか、ムダがないですね。ハードっぽい趣のイントロなのに、サビでこういう情けない男の感じの歌詞って、好きだなあと思って、書いてみました。
ギターをジャカジャカやりながら、適当英語で歌って曲を作ったりするんですけど、その適当英語が意外とはまっちゃって、変えられなくなった曲ですね。それで”I hate you & I love you But I don’t know”のまま書いちゃった、口の気持ちよさが優先みたいな感じで。でも、友達の恋愛の話で、「あいつ(彼氏のこと)むかつくんだよね」っていう愚痴をきいてると、そういう愚痴を言ってる子の方が、結局めちゃくちゃ好きなんじゃん、みたいな説が自分的にはあって。好きすぎて、求めることが強すぎると、アラも見えて来たりするんだろうな、と思った時に、むかつくとか腹が立つとかと、好きだ、愛してるっていうのって表裏一体なんだなって。
これは、サビのメロディは十八番の感じかなと思うんですけど、Aメロはけっこう秀逸なんじゃないか? と思っていて。昔だったらもうちょっと動きのないメロディにしていた気がするんですけど、今だからこの、たゆたうようなメロディを書けたのかなと思います。
歌詞は、今の私の歳と精神年齢では書けないサビなんですけど、大学生ぐらいの気持ちに戻って書きましたね。もちろん、私はいまだにもがいているので、こういうふうに「人を信じられない」みたいなことは、たまにぶつかる壁ではあるので。それを詞にする時に、もっとやわらかい表現にもできたんですけど、それだとせっぱつまった感じが伝わらないかなと思って、言葉の彩度を上げた感じです。
これは、私がいちばん赤面する曲ですね。すごい恥ずかしいんです、ギター・ロックすぎて(笑)。シャレで作った曲で、メンバー的には18曲から13曲にしぼる時のボツ候補だったりしたんですけど、エンジニアさんとかレーベルの方とか「この曲いちばんいいよ!」とまで言ってくれたから、じゃあ入れようと。
歌詞は、思春期にタナトスとエロスで分かれるってきいたことがあって。性の方に行った人は、死への欲求が生まれないらしくて。逆に性を抑圧された人は、死にたいみたいな願望が生まれたりして、タナトスの方に行くっていう。私はまさにタナトスの方に向いていた人だったから、それを曲にできたらいいなっていうのが前からあったんです。
「あの人優しいよね」とか「いい子だよね」みたいな話が私は嫌いで。誰かの意見に乗っかったり、同調したり、長いものに巻かれたりするのって、別にいいことじゃないと思っているので。主体性がないということを、協調性があって優しいっていうポジティブな解釈で片付けるのが、私はすごくイヤで。じゃあ実際自分が何か被害をこうむる場面になった時に、その子の優しさはちゃんと働くんですか?っていう。自分の意見を貫いたり、世相と違うことを言い出したりすることが、すごくネガティヴに捉えられるけど、むしろ被害をこうむってもいいから自分の意見を貫いている人の方が、私は好きだし……っていうのが、このサビにつながってるんです。
みんな仕事とかで毎日疲れてるじゃないですか? 学校とかも。そこで重い音楽を聴きたい人もいると思うんですけど、最近私は、疲れて帰った時に、さらに疲れる映画を観たりだとかはしたくないと思っちゃって。なるべくなんにも考えなくてすむものを観て、「ははは」って笑って寝たい。音楽もそういうのがいいよな、って思うようになってきて。昔はもう一撃必殺みたいな曲を作ることしか考えてなかったんですけど、一瞬、間にはさまるみたいな、ポケットみたいな曲があってもいいなと思って。ポップな曲が好きになって来てるんだと思います、昔より。聴くのも、作るのも。20代前半とかは、やっぱり重たいものが好きだったんですけど。
大学3年の時に書いた曲です。今まで出して来たアルバムに合わなくて、ずっと放置されてたんですけど、今回の作品のテーマが「青春」とか「人生」ってなった時に、噛み合う感じがして。歌詞もアレンジも変えてないです。なんでこんなアレンジにしたんだ?と思いながらレコーディングしたんですけど、変えちゃうとこの曲じゃなくなりそうだと思って。
「こんなふうに毎日が過ぎるなら それはそれでいい」っていうのは、キリキリと過ごしてたけども、きみとふたりでいる平和な日々が続くならそれはそれでいいのかも、って自虐的になりながら言ってるんじゃないですかね。それを受け入れたくない、幸せになったら枯れる!みたいな妄想に取り憑かれてた時代というか。
これは、18曲デモ作りまで残り3曲、あと2時間で締切って時に、短い曲をその場しのぎで(笑)。もともとは……これ、わかる人はわかっちゃうと思うんですけど、宇多田ヒカルさんのセカンドアルバム『Distance』のラストに入ってる『HAYATOCHI-REMIX』っていう曲があって。そのオマージュじゃないですけど、あのピアノのコード感を基に何か曲作れないかなって思って、打ち込んでいたデータがあって。もうこれにメロディを載せてデモってことにしてちゃおうと思って、多重録音で声を重ねて……じゃあこれ、声を4つ入れて4人で歌うっていう体にしようっていうことで送ったら、できあがりが良かったので、入れました(笑)。
「命のようだ」っていう意味です。深夜の高速をクルマで走ってる時に思いついたんですけど。エナジードリンク、あるじゃないですか。深夜の高速で、あれを飲んで外の夜景を見ると、すごいキラキラするんですよ。赤とか青とか黄色とかのコントラストがすごくて「うわ、すごいきれい」って思って。それが過ぎ去ると消えていっちゃうわけじゃないですか、視界に入らなくなると。それをなぜか、その時私は「命のようだ」と思って。一瞬すごくきれいに見えても、ふとした瞬間にこぼれ落ちて消えちゃう、みたいなのを曲にしたくて。そんなふうに死ねたらいいな、みたいな、曲調のわりに暗いというか、ちょっと危うい詞なんですけど。
このアルバムでいちばん好きな曲です。いちばん私を投影したというか、本音炸裂というか。ちょっと後ろ向きなんですけど。あと、身に覚えのある人にしか、ひっかからない歌詞かもしれないですけど。これはでも、大人というか、夢を追っていてあきらめたことのある人には、わりとわかる詞なのではないかと思ってます。30歳越えたりしてると、意外と感情移入する人はいるのかな、とか。
「お金を使い捨てて普通を買う」というのは、パンチラインかなと思います。ここに反応する人、意外と多くて。それも女の子が多い。かわいい感じの女の子でも、深層心理にこういう感じのことを抱えてるんだな、意外と闇があったりするんだな、と思ったり。
もともとアルバムを作る前からあった曲で。去年から回った10周年ツアーは、『夢みる頃を過ぎても』っていうタイトルで、この曲をやっていたので。『メンバーもアルバムを作る時はこれが根底のテーマとしてあったんじゃないかと思います。
この曲と『ラプス』は、プロデューサー・アレンジャーの河野圭さんと、一緒にスタジオに入って。もっといなたい感じの曲だったんですけど、河野さんに入ってもらって、ストリングスを入れたり、コード感を変えたりしたことで、とても拓けた、スケールの大きい風通しのいい曲になって。アレンジャーさんと一緒にやるのは初めてだったんですけど、すごくよくなったと思います。
これは、昔作った5曲入りの自主制作盤をそのまま付けました。2011年、大学4年生、完全アマチュアの時に作っていた自主盤の2枚目ですね。この2枚目はかなりよくて。当時やってたライブ、対バンで30分とかじゃないですか。そのセットリストのまんまの流れになってるんです。だから、当時自信満々で出した盤で、すごくよく売れましたね。それが今、転売サイトとかで20,000円ぐらいになってたりしてるのもあって、付けることにしました。10周年だし、いいんじゃないかなって。この自主盤をUKプロジェクトが聴いてくれて、次の作品から一緒にやれる運びになった、というのもあります。
【日程】 | 2018年9月20日(木) |
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【会場】 | 大阪・なんばHatch |
【時間】 | OPEN 18:00 / START 19:00 |
【日程】 | 2018年9月23日(日、祝) |
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【会場】 | 東京・新木場STUDIO COAST |
【時間】 | OPEN 17:00 / START 18:00 |
もっといい音楽を作れるようになりたい、
全然こんなもんじゃないぞ、っていう、すごい焦燥感がずっとあって
■今回は曲がたくさんあったそうですね。
「なんか、貯まっちゃったんですよね。『このアルバムのために1月中に18曲上げてください』ってマネージャーに言われて、1日に3曲とか書くような生活をしていて。あと去年も、リリースはなかったんですけど、曲は書いていたので、膨大なデモが貯まっていて。 昔より曲をいっぱい書くようになってきました、なんか。今、音楽の勉強をしたい欲が強くて。いろんな楽曲のコードを、『どういう構成でできてるんだろう?』っていうのを調べて、『ああ、こういうコードの使い方をしてるから好きなのか』とか。いろいろやっていくうちに、『このコードとこのキーで、この音を当てて作ったら気持ちいいだろうな』っていう実験みたいなことを始めて、そういう中でいろいろ曲は生まれていました。特に、コードの流れとメロディの関係性がすごく気になっていて。教材はこの世にいっぱいあるので、そういうのをいろいろ聴いたり作ったりのくり返しでした。頭の中で話が飛躍しすぎて、留学をしなきゃいけない、みたいに思ってた時もあったんですけど(笑)。ニューヨークかロサンゼルスに行って、エンタテインメントを学ばないといけない、いろんなライブを観るとか、ミュージカルを観るとか。今思えば、別に日本でもできることなんですけど。っていうくらい自分が足りてないというか、欲してるものがあるんじゃないかという考えに取り憑かれたことがあって」
■進歩したいとか、レベルアップしたいとか、そういうこと?
「そうです、そうです。もっといい音楽を作れるようになりたい、全然こんなもんじゃないぞ、っていう、すごい焦燥感というか、満たされなさがずっとあって。そしたらもう、今までやって来なかったことをやってみるしかないか、みたいな感じです」
■なんでそうなったんでしょうね。
「去年の2月に、『森亀橋』(森俊之・亀田誠治・佐橋佳幸が行っているイベント)っていう大阪のイベントにひとりで呼んでもらったんですね。日本の歌のシーンを築いて来た人と若手のコラボレーションを5組観せていくイベントで。私はCharaさんと歌って、さかいゆうさんは田島貴男さん、EGO-WRAPPIN’のよっちゃん(中納良恵)は吉田美奈子さん、くるりの岸田(繁)さんは小田和正さん。それのトップバッターで出て。リハからもう『ヤバい!』と思ってたんですけど、本番を観ていたら、もうラスボスに次ぐラスボスで。特に最後の小田和正さんが怪物すぎて。『歌ヤバいなあ! 70で走り回ってこんなに歌えるってどうなってるんだ? 自分が70歳になった時に、これだけの歌を歌えるかなあ』と思って。すばらしいものを観たと同時に、ぶん殴られたみたいな気分になって、絶望して。ここから折り返し地点、0歳みたいな気持ちで、もう一回歌と向き合わないと、死ぬまでにあの境地に行けないなあと思って。そこが大きな転機だったというか。歌と、もっとちゃんと向き合っていかないと、自分が思い描いていたものには絶対になれないって気づいて、そこからあせりが出て来て、もっと努力をしよう、みたいな。で、そういうところを目指すんだったら、曲もちゃんと、狙い撃ちできる書き方をできるのとできないのとでは、違うと思って。それで今、どっちもがんばろうというモードになっている感じですね。特にメロディとかは、考えて作るようになりました」
■この『タイム・ラプス』は、いつ頃から構想があったんでしょうか。
「アルバムの構想みたいなのは、前作の『愛のゆくえ』を作ってる最中からあって。『愛のゆくえ』が、わりとドープな作品だったじゃないですか。そういうのを作ってたら、次はキラキラした青春の、青くさいのを作りたいな、みたいな気持ちになって。その頃『君の名は。』を観たせいもあると思うんですけど(笑)。二回観に行って、泣いて、で、『前前前世』がかかるじゃないですか。いいなあ、こんなのバンドでやったら楽しいだろうな、みたいな気持ちになって、メンバーみんなにもそう言って。それで、去年の末ぐらいから取り組み始めたんですけど……まあ、そんな、青春キラキラみたいな作品にはならなかったですね(笑)。アラサーが青春みたいなことを考え始めると、人生を突きつけられちゃうんで、どちらかというと人生と向き合う系のアルバムに。たぶん10周年っていうのもあって、いろいろ総括する感じの作品になったなあっていう。10年前だったら書けなかった詞がいっぱい入ってると思います」
どれだけ短時間で聴き手の心に届くか、というのは考えていました
■あと、言葉ひとつひとつをシンプルに簡単にしていこう、というの、ありません?
「それは『猫とアレルギー』以降、すごく意識していて。今までは、何かを特定することによってはじかれちゃってた層があったと思っていて。その分ポイントで届くところには深く届いてただろうし、それはそれでよかったと思ってるんですけど、ただ、『はじかれてた層には届けなくていいの? はじくために音楽やってるわけじゃないんじゃないの?』と思った時に……やっぱり、J-POP、J-ROCKの中の歌詞で勝負しないといけないと思うので。高尚な詞を書いて、でも結局届かないんだったら、それってしょうもないなと思うので。なので、小難しい言葉よりかは、聴いてスッと意味がわかるものにしたくて。どれだけ短時間で聴き手の心に届くか、というのは考えていました」
■結果、どんなアルバムになったと思います?
「自分たちにとっては、普段着みたいなアルバムになったなって。メジャー以降、『猫とアレルギー』とか、『愛のゆくえ』って、おしゃれしてたり、ちょっとかわいくしてたり、かっこつけてたりしたんですけど、今回はまったくそういうのがないというか。背丈に合った服を着てる感じ。おしゃれでもなく、かわいくもかっこよくもない、でところどころシミが付いてたり、綻んでたり、長く着ていた分の経年変化もあったりしつつ、でも、いちばん身体にぴったりくるものができたかなあと。いちばんてらいのない、きのこ帝国にとっての王道な盤ができたなと思っています。ほんとに、こんなアルバム作ったことないと思います。これまでのどのアルバムとも全然違う。今までも自分で意識的に変化し続けてきたとはいえ、こんなに素で作ったものが、こんなにこれまでと違うものになるのか、っていうのは不思議ですね。これがいちばん、普通のバンドが出すファースト・アルバムっぽいですよね。なぜ今、10年やってこれができるのか不思議ですけど。ここである種、やっと1周回った感じなんですかね」